男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
 驚く私に、ゼネダ様は真っ白な長衣の裾をパサリと捌きながら柔和に微笑んで告げる。
「そうでしたか、ゼネダ様も。ここは柔らかに注ぐ陽光と、爽やかに吹き抜けていく風が心地いいですね」
「おや。私も同じ理由で数ある場所の中で、ここが一番の気に入りです」
 ゼネダ様と肩を並べ取りて留めのない話をしていると、背後から新たな足音と気配が迫ってくるのに気づく。今日に限って複数人がやって来るとは珍しいこともあるものだと、なんの気なしに振り返る。
「ほう、奇遇だな。たまたま人影を認め、誰かと思えばお前たちだったか」
 私が振り返るのと同時に、頭上からよく聞き慣れた声がかかる。
「え、サイラス様!?」
「ここには、俺もひと心地つきたい時によく来る」
 従者として仕えるようになってひと月近くになるが、これは初耳だった。
「そうだったんですか。存じ上げませんでした」
「おやおや。私も陛下がここを気に入りにしているというのは初耳ですね」
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