男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
「あら、いいのよ。たいしたことじゃないんだから。……ええっと、それよりもセリウス様は今日は、なにか私に尋ねたいことがあって来たとおっしゃっていたかしら。ごめんなさいね、年寄りの思い出話なんか長々と聞かせてしまって」
 サリー様は張り詰めた空気を振り払うようにカラカラと笑ってこれまでの話題に区切りをつけ、今度は私に水を差し向けた。
「実は、先日あげていただいた報告書の中で一点お尋ねしたいことがあってまいりました」
 私が『報告書』の一語を告げた瞬間、サリー様の眉がピクリと動く。
「まぁ。なにか不備でもあったかしら?」
 私は簡素な卓の上に件の報告書を広げると、該当箇所を指し示しながら尋ねる。
「ここの部分なのですが――」
「……そうね、ご指摘の通りだわ。確かに、ここは金額が過剰に計上されているわ」
「では、多い分は差しい引いて修正させていただきます」
「ええ、そうしてちょうだい」
 私の指摘にサリー様は頷いて同意した。けれど、その表情が心なしか苦々しく感じるのは、きっと私の気のせいだろう。
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