男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
 大きく見開かれたセリーヌの目から、大粒の涙がホロリと落ちる。それを追うように彼女は一度そっと瞼を瞑り、再びゆっくりと開く。
「私でよろしいのですか?」
「セリーヌがいい。セリーヌ以外はいらん。俺の妻は、お前ただひとりだ」
 震える声で小さく問われ、重ねたままの彼女の手を握り込み断言する。
 次の瞬間、セリーヌの目から清らかな雫がホロホロと溢れだす。頬を伝う涙をそのままに、彼女が俺に泣き笑いみたいな顔を向ける。
 初めて見るクシャクシャの笑顔が無性に可愛くて、いじらしくて堪らなかった。ゆっくりと開かれる彼女の唇を、全身が脈を打つような緊張感で見つめた。
「サイラス様、どうか私をあなたの妻にしてください……あっ!」
「セリーヌ!」
 愛しい思いに衝き動かされ、立ち上がって彼女を掬うように横抱きに抱き上げる。すっぽりと懐に抱き締めて、涙で濡れた眦に唇を寄せる。
 何度唇で拾っても、涙は一向に治まる気配がなかった。
「おいセリーヌ、そんなに泣くと美しい瞳が溶けてしまうぞ」
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