男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
「私とて初めて知ったのですが、嬉しい涙は止まらないのです」
 涙に濡れた瞳で告げられる一言一句、その全てが苦しいくらいに愛おしい。こんなにも愛しい存在に出会えたことは、まるで天文学的な確率の上で成り立つ奇跡。この奇跡のような巡り合わせに、俺は生まれて初めて天に感謝を捧げた。
 同時に、俺の目頭にもじんわりとした熱が込み上がってくるのを感じた。
「そうか、ならば好きなだけ泣いたらいい。ただし泣くのは、俺の胸限定だ」
「はい、サイラス様」
 ……愛する思い、それに伴って湧き上がる嫉妬や後悔といった感情。嬉しいと涙が込み上げてくることも、全てセリーヌが教えてくれた。
 彼女の存在が、俺の未来を明るく照らす。今度は俺が、セリーヌと腹の子をありったけの愛でもって包み込む番だ。
 愛しい天上の女神を固く胸に抱き締めて、俺は決意を噛みしめた。

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