男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
 皇妃となるのは、ラインフェルト帝国軍初代元帥プロスペールの娘でサイラス様の従者を務めるセリウスの姉・セリーヌ。一国の皇妃として立つには身分的に劣るものの、父のもたらした偉大な功績と知名度が後押しとなり表立って不満の声は聞こえてこなかった。それどころか、ここまで結婚の勧めを頑なに拒み、側妃のひとりも持たずにいたサイラス様の結婚話に忠臣らは狂喜乱舞した。
 と、これだけ聞けば事はすべてが順調に思えるだろう。しかし、昨日まで男の形で従者をしていた人物が消え、代わりに翌日からドレスに身を包んだ同じ顔の女が宮廷を闊歩するようになれば、親しくしていた一部の宮廷従事者に一連の事情がバレないわけがない。
 私は結婚発表に先立って、ダボット様とゼネダ様のふたりに面会を申し入れた。このふたりにだけは、どうしても直接私の口から伝えておきたかったからだ――。

 早々に設けられた面会の場。
「結果としておふたりを騙していたことに違いはありません。申し訳ありませんでした」
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