男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
「……こ、これは! お預かりいたします!」
 子猫を目にした兵士は目を瞠り、宝物にでも触れるみたいな恭しい手つきでマントごと受け取って駆け出した。
「お前たちもだ。さっさと持ち場に戻れ」
「「ハッ!」」
 サイラス様の指示で、近衛兵らは蜘蛛の子を散らしたように持ち場へと戻っていった。
「其方、いつまで宮廷の砂を舐めているつもりだ? 物好きな奴だ」
 恐々と身を縮める私の頭上から、サイラス様が嘲り混じりに言い放つ。
「……あ、あの! 畏れながら、私どもへのお咎めはなしということでよろしいのでしょうか?」
「お咎め? ハッ! わからんことだ。生憎と俺は多忙でな。周りを飛ぶ蝿が立てる羽音にいちいち目くじらを立てるほど暇ではない」
 サイラス様はくるりと踵を返すと、私たちをその場に残し玄関ホールへと歩きだす。
 彼が放った王者の傲慢さが滲む尊大な物言い。しかしそれは、同時にセリウスの不敬を見過ごす寛大さを示している。
 衝撃に見開いた目に威風漂う彼のうしろ姿を映しながら、胸が不可思議にざわめくのを感じた。
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