男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
 考えるよりも前に、咄嗟に腹部を抱き締めて体を丸くした。グッと瞼を閉じ、この後襲いくるであろう衝撃に備えて息を詰めた。
 瞑る直前に必死に人の波を割り、こちらに駆けてくるサイラス様の姿を見たような気がした。だけど、いかんせん私と彼の位置には距離がありすぎる。サイラス様はきっと、間に合わない。近衛以下、他の警備担当者も同様だろう。
 今、この子を守れるのは私だけ――!
 この時、怖さは微塵も感じていなかった。なぜサリー様が私に襲い掛かろうとするのか、そんな疑問も今は脳裏を掠めもしない。私はただ、しっかりとお腹を抱き締めて、静かにその瞬間を待った。
 ところが、待てど暮らせど衝撃は訪れない。
 周囲には悲鳴や怒号が響き渡っていたが、雑多に入り乱れるそれらのひとつひとつに耳を傾ける余裕はなかった。体も硬直したままで、お腹に回した腕を解くことも、きつく瞑ったままの瞼を開くこともできずにいた。
「無事か、セリーヌ!!」
 サイラス様の逞しい腕に掻き抱かれ、その声を聞いて、私はやっと震える瞼をゆっくりと開いた。
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