男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
 しかし、俺に言わせればそんなのは甘えだ。これから俺が従者として常に脇に置き、甘えた心と体を鍛え直してやる。それこそ、若き日の俺がプロスペールから厳しくも温かい指導を受けたように。
 なにより、従者の支度金と一部の給金を前払いで渡してやれば抵当権の取り消しが可能となる。セリーヌと母親の当面の暮らしも保たれ、奴がこれを断る道理はない。
「さて、セリウス宛てに従者招集の書状を認めるとするか」
 今度の展望を定めた俺は、長く温まっていたお湯から上がり浴場を後にした。

 トントン拍子にセリウスの従者就任が決定した。そうして手紙を認めてから僅か三日後、俺は彼を宮廷に迎えていた。
 近衛兵の手で謁見室の両開きの扉が開け放たれると、臣下らが居並ぶ広い室内奥で床に片膝を突き最上級の礼を取って待つ彼の姿が視界に飛び込んできた。
 腰を折っていたために、俺から見えるのは全身のシルエットと後ろで長い金髪を結わえた形のよい頭部のみ。ところが彼の姿を目にした瞬間、言葉では表現しにくい猛烈な違和感を覚えた。
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