男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
 長い沈黙の後、サイラス様は皮肉げに口角を上げて呟くと、カツン、カツンと長靴の音を響かせながら再び謁見室へと取って返し、私のすぐ前で足を止めた。
 ほんの数十センチ先に立つサイラス様は、想像よりもはるかに逞しい体格をしていた。二メートル近い長身は、鍛え上げられたしなやかな筋肉に覆われて厚みがある。
 鋭い眼光と相まって、野生の獣に追い詰められているような心地を覚えた。
「セリウスよ。俺の従者になろうとするならば、肝に銘じておけ。俺は己にも側仕えにも清廉潔白を求めている。もしこれが誓えぬ時は早々に立ち去れ、咎めはせん」
 形のいい彼の唇が開き、淡々と告げる。
「どうだ? これを聞かされた上でも、俺の従者になろうという心に変わりないか?」
 淀みなく伝えられるこれらは、きっと側仕えとなる全員にされる共通確認に違いない。しかし、後ろ暗い私の心に鋭く突き刺さり、良心が狂おしく叫びをあげる。
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