男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
 問い返そうと口を開きかけた次の瞬間、彼に容赦のない力で肩を掴まれて引き寄せられた。足が宙を蹴り、体が浮く。けれど突然の浮遊感に驚いたのは一瞬で、筋骨隆々の盛り上がった肩に鳩尾がめり込み、その衝撃で激しく咳き込む。
 なんと、私は小麦袋でも運ぶみたいにサイラス様の右肩に担がれていた。咳はなかなか治まらなかったけれど、その後も体勢に一切配慮はされず、サイラス様は私を担いだまま容赦なく歩き続けた。
 目に映る景色は上下が逆さになって涙の膜で滲んでいた。
「こ奴には直接指導が必要だ。其方らは通常の業務に戻れ!」
 サイラス様は困惑気味に問いかける近衛長官らを振り切って謁見室を出て、ベルベットのカーペットが敷かれた回廊を奥へと進む。
 等間隔で配された近衛兵らが、一様に目を丸くしていた。その姿を逆さまの視界に映しながら、この状況は訓練された彼らをもってしても驚きを隠しきれぬほど奇妙なのだと理解する。
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