男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
 いったい何が彼をこうも怒らせ、こんな状況になってしまっているのか。……まさか、彼は気づいて? いいや、それはない。
 気づいていたらわざわざ長髪を指摘したり、そんなまどろっこしいことはしないはず。過ぎった考えを自ら否定するも、不安が胸に暗雲となって立ち込めた。
 そうこうしているうちに一際豪奢な両開きの扉の前に辿り着き、ついにサイラス様が足を止めた。
「其方らに用はない。俺たちの入室後は、扉前での控えは不要だ」
 左右から扉を引き開ける近衛兵にこんな指示を残し、サイラス様は大股で室内へと進んでいく。
 サイラス様が真っ直ぐに向かったのは、室内奥の優に四、五人は横になれそうな大きな寝台だった。辿り着くと、彼は整えられた真っ白なシーツの上にそれこそ小麦袋でも放るかのようにぞんざいに投げ出した。
 私は仰向けの体勢で寝台に倒れ込んだ。
「っ!!」
 目を瞑って衝撃に備えたが、極上のクッション性を有する寝台は私の体を包み込むような柔らかさで受け止めた。
 この時、脳内は混迷を極めていた。
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