男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
 ふいに顎にあてられていた手が離れ、その手が私の側頭部を撫で上げる。彼はなにを思ってか、そのまま幾度か手櫛で梳き、短くなった髪をサラサラと指の間に遊ばせていた。
 私は身体を固くし、息を詰めて彼のするに身を任せた。
「ただし、お前の覚悟に免じてひとつ選択肢を与えよう」
 サイラス様は『覚悟』の件で一旦手を止めると、最後に味わうようにひと撫でして手を引いた。彼の言葉で、この髪が私とセリウスの未来に希望を繋げてくれたことを知る。
「……あ、あの? サイラス様、どうかその選択肢というのをお聞かせくださいませ」
 なかなか続きを話しだそうとしない彼に恐る恐る尋ねながら、しかし私はこれから示されるどんな選択でも受け入れて遂行する心づもりができていた。
 全ては愛するセリウスのために――!
「お前が俺にこの体を差し出すのなら入れ代わりの事実に口を噤み、このまま従者として俺の側にあることを許そう」
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