男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
 ……さっきまで、私はアメジストの瞳をした野生の獣に頭から食われてしまうのではないかと怯えていた。
 だけど、そうではない。
 目の前の美しい獣はもっと残酷で容赦がない。全ての決定権を私に委ね、迷い、戸惑い、苦悩する私の様を高みから眺め楽しんでいる。
 この獣は野生の荒々しさと一国を統べる知略を有し、人心掌握にも長けた絶対王者。私の浅知恵では端から敵うわけがなかったのだ。
 私は至高のアメジストを見つめながら覚悟を決めた。
 この決断は、決して投げやりでも諦めでもない。もとより貧して立ち行かなくなった時は、この体を幾ばくかの金銭に換えるつもりだったのだ。それが少し早まっただけのこと。
 さらにサイラス様は、この身に破格の価値をつけてくれている。このまま従者として仕えていいと、こんな好条件を断る選択などあり得ない。
「その選択を受け入れます。……全て、あなたの望むままに」
 理性の部分で納得しても、体の震えまで完全に封じることは出来なかった。けれど、精一杯の勇気で告げた。
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