男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
「お前は愚かな選択で俺を謀ったが、今回は賢い選択をした」
 次の瞬間、サイラス様は私との間に作った空間をゼロにする。
「あっ!」
 彼の懐にギュッと抱き締められて、人肌の温もりに包まれる。私のものとは違う筋肉質でガッシリとした感触にドクンと鼓動が跳ねる。
 さらに彼からは男らしい香りがして、身の内がゾクリとした。
「契約成立だ」
 これまでにない甘やかな声が鼓膜を震わせる。彼の美貌がグッと迫り、直後、唇に柔らかな感触が落ちる。
 滲む近さにサイラス様を見ながら、すべての神経が彼に集中していた。彼と、彼に与えられる口づけの温もりと柔らかさだけがこの瞬間を支配していた。
 甘やかな口づけは、段々と深さを増す。彼の唇がふたりの隙間をしっとりと埋め、私の吐息まで奪っていく。
 彼の口づけは優しいのに容赦がない。それはまるで私たち姉弟の生殺与奪の権すらも、全ては己の手の内にあると知らしめようとするかのようだ。
< 57 / 220 >

この作品をシェア

pagetop