男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
 ポカンと見つめる私に、サイラス様は笑みを収めて言い放つ。
「で、ですが。その……」
 てっきりこのまま契約の遂行に移るのだとばかり思っていた私は面食らい、戸惑いを前面に滲ませてサイラス様を見返した。
「なんだ? 俺は『興が削がれた』と言ったろうに、随分と積極的だな。お前がその気なら、付き合ってやることもやぶさかではないが……?」
 サイラス様がズイッと身を乗り出してきて、挑発的に問う。
「いえっ!! とんでもない!」
 裏返った声で答える私を、サイラス様は面白がるように眺めていた。
「俺はこれから残る政務を片付け、その後はヘッセラボス共和国の大使を招いての晩餐だ。この晩餐に従者の随行は不要。さらに晩餐後に酒宴となれば深夜までここには戻れん。ゆえにお前の従者の勤務開始と先ほどの契約の履行は、どちらも明日以降だ」
「は、はい」
 言い渡された契約履行の猶予に、ホッと胸を撫で下ろした。
「お前は侍従長官室に出向き業務の詳細について指導を仰げ。その後は自室で荷解きを済ませ、明日からの勤務に備えろ」
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