男装即バレ従者、赤ちゃんを産んだらカタブツ皇帝の溺愛が止まりません!
 ギョッとした様子で至極真面目に答えるセリーヌの表情が、先ほどの達観した物言いとは不釣り合いにあどけなく頼りなげで、思わず噴き出した。
「あ、あの? 私はなにかおかしなことを言ったでしょうか」
 肩を揺らす俺を、セリーヌが眉間に皺を寄せ不安げに見上げていた。その姿がなんとも言えず可愛くて、俺は衝動的に彼女の唇を奪っていた。
「ん、んんっ!?」
 彼女は突然の口づけに宝石みたいなブルーの目を真ん丸にしていた。しかし俺が段々と口づけを深めていくと月光を紡いだみたいな金色をした長い睫毛をゆっくりと伏せてゆく。そうして幾度目かに唇の角度を変えた時、ブルーの瞳は完全に金色のカーテンの後ろに隠れた。
 甘やかな唇を味わいながら、心と体がかつてないほどに昂るのを自覚していた。俺の口づけを受けながら芳しい色香を漂わせるセリーヌを前にして、これ以上迸るような熱情を抑えることは困難だった。
 最後に彼女の口内の甘さと柔らかさを堪能し、そっと口づけを解く。
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