お見合い相手から溺愛されて困っています。
「あかりちゃん!」 

名前を呼ばれ驚くと同時に手を握り締められた。

「俺に用があってきてくれたんだよね?」

「ちょっと会いたかっただけなのでもう大丈夫です。」

「俺は大丈夫じゃないよ。あかりちゃんが会いにきてくれて本当に嬉しかった。本当に最近忙しくて今日こそあかりちゃんに会いたいと思って仕事を巻いてた…けどそれでも9時を過ぎてしまったんだ。諦めて帰ろうとした時に通用口にあかりちゃんがいて本当に驚いた。」

「…」

「あかりちゃんが会いに来てくれるなんて思ってもみなかったから。あかりちゃんが会いたいって思ってくれるなんて思わなかったから嬉しくて。」

「…私、桜木さんからあの後連絡が来なくて寂しいって思って…」
と小さな声で話し始めた。
「桜木さんとこの前出かけてとっても楽しくて…」
「桜木さんのことを1人の人として惹かれてしまって…」

俺は彼女がポツポツと話す言葉に耳を傾ける。
あかりちゃんが俺に惹かれた??
俺は喜んであかりちゃんを抱きしめようとしたその時、

「でもやっぱり桜木さんは御曹司なんだな、とさっき改めて思ってしまって。桜木さんの後ろに見える会社があまりにも大きくて改めて思い知らされたと言うか…。桜木さんという人に惹かれたけどやっぱりあなたは会社を背負う人で、今後も私とは釣り合うことができないってわかりました。もう深入りしません。」

そう言ってあかりちゃんは家に入ってしまった。

俺は呆然とした。
たった今、俺に惹かれたと言ってくれたのに。
会社を背負っているから無理??
そんなことで判断しないでくれよ。
俺の魅力は会社に負けてしまうのか。
普通副社長だと言うとかえって人が群がってくるのにあかりちゃんはそのせいで離れていくのか?
あかりちゃんの目の中にやっと入れたのに。
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