愛して欲しいなんて言わない!

つきない喧嘩

エレベータが閉まる直前に見た西九条は
苛立ちで目がつり上がっていた

私は駆け足で家の中に入ると
自分の部屋に閉じこもった

使っていないシングルベッドに向かって
学生鞄を放り投げる

重たい鞄は
ぼすっと音をたてて
布団の中に埋もれていく

引っ越してきたときより
ずいぶんと片付けられた部屋

着替えるときしか使用しない部屋だ

勉強は西九条の目が届くダイニングでやる
教えてくれるわけでもないのに
ダイニングでやらないと怒るのだ

寝る部屋も
西九条が用意した寝室で寝る

テレビは居間で
西九条と一緒に見る

いつもでも
西九条のそばに
何かしている

今日は嫌だ
苛々している西九条と一緒に過ごしたくない

西九条が家のドアを閉める音が聞こえた
苛立っているはずなのに
ドアを静かに閉めた

私の腹の虫のほうが
けたたましく鳴っている

規則正しい生活に慣れてきた体は
食事の時間になると
食べ物を欲求してくる

私の腹は
早く夕食を食べろと
激しくなっていた
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