愛して欲しいなんて言わない！

「嘘は…言ってない」

私の声が小さくなる
視線も西九条からそらした

小林が嘘をついている？
真面目で優等生の男が嘘をついている

私はなんで嘘をつかれた？

なんでいもしない妹のプレゼントを
買ったのだ？

腹違いの妹がいるとか？
家庭が複雑で
戸籍には載っていない妹がいるのか？

「正直に話すまで
夕食はない」

呆れたように西九条が言うと
私の部屋のドアを閉めた

部屋を遠ざかっていく西九条の足音が
聞こえた

私は顔をあげると
大股で部屋を出て行った

自分の部屋に戻ろうとしている
西九条の背中を睨んだ

「わ、私は…
馬鹿だけど、
成績が悪いけど
西九条に嘘はついてない

信じてないならそれまでだけど
私は小林に妹のプレゼント選びに誘われただけだ」

大きく息を吸う

足をとめた西九条が
私に背を向けたまま
話しを聞いているようだった

「小林の家族関係なんて知らない

けど隣駅にある駅ビルで
ブランド物の筆箱とペンシルセットを
買っただけだ

本当に嘘は言っていない」

私は言い終わると
部屋のドアを閉めた

クローゼットの中から
ハーフコートを奪い取るように
手に引っ掛けると財布を持って
部屋を飛び出してった