幼女で領主で聖女様!?名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる!
 ムラトはリリンダの方に火酒を差し出す。

「いらない」
「火酒はリリンダには無理だ。ジュースにしとけ」

 そこに加わったのはサージだ。町長から差し入れられたジュースの瓶を持っている。
 サージからそれを受け取ったリリンダは、小さな声で礼を述べた。リリンダの顔が、ちょっぴり赤くなっている。

「吾輩も! 吾輩も!」

 テーブルの下からシドが声を上げ、アルダリオンが平皿に惜しげもなく火酒を注いでやる。
 サージの部下だという元傭兵達も合流してきて、結局、リーゼ以外、この屋敷で暮らしている全員が食堂に集まることになってしまった。

「リーゼ嬢ちゃんがいないのに、俺達だけ呑むのは悪い気がするなぁ」
「リーゼお嬢様の前では、あなたはお酒は飲まないことにしているでしょう? ドワーフはお酒が大好きだというのに」

 サージのグラスに、アルダリオンが酒を注ぐ。

「そりゃそうだろ。みっともないところは見せられないしな」

 ムラトがこの屋敷に迎え入れられて一週間。その間、リーゼの前では一滴も口にしなかった。

< 155 / 310 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop