幼女で領主で聖女様!?名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる!
 リーゼとリリンダで彼を安全圏に運ぶのは無理だというのはわかっている。だから、リリンダもそれどころじゃないと言ったのだろう。
 けれど、傷口さえ塞いでおけば。彼は命を繋ぐことができるかもしれない。

「早く行く!」
「かたくなぁれ!」

 リリンダに再び担がれるけれど、その前に、と目についた大きな傷をもうひとつ塞いでおく。

(ごめんね、グレンおじさん)

 リリンダは走り始め、階段を一気に駆け下りた。だが、リーゼがグレンのところで時間を費やしたのが失敗だったのだろう。
 背後から勢いよく突き飛ばされ、二人そろって廊下に倒れこむ。
 素早くリーゼを床の上に放り出したリリンダは、全身のバネを使うように飛び起き、声の方に向き直った。

「――えいっ!」

 狙いを定めて突き出した彼女の剣は、的確に相手の心臓をとらえている。その剣を引くのと同時に、リリンダは後ろに飛びのいた。
 だが、心臓を貫かれたのに、相手は倒れることはなかった。動きが鈍くなったものの、さらにリリンダに向かって手を伸ばす。

「……吸血鬼」

 リリンダが呆然とした声でつぶやいた。だが、呆然としていたのは一瞬のこと。

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