幼女で領主で聖女様!?名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる!
 けれど、こうやって風を切って走る――リーゼは乗っているだけだけど――のは、最高の気分だ。

「吾輩の方が速いぞ!」

 前世では、遊園地に行く機会なんてないまま、人生を終えてしまった。ひょっとして、ジェットコースターというのはこんな感じだろうか。
 あっという間にデリモの手前に到着する。

「ありがとう、サージ」

(ああ、やっぱりぐちゃぐちゃになってるな)

 アルダリオンが可愛く結ってくれた髪も、ここまでの全力疾走の間にボロボロになっている。首を振ったら、リボンが解けて落ちてきた。
 しかたがないので、リボンを解き、ワンピースのポケットにしまい込んだ。

「……まあ、リーゼが楽しかったならそれでいいんだがな」

 サージの馬は二人を乗せて全力疾走したので、ちょっと疲れたらしい。まだ息が荒い。

「お前、だらしないぞ。もっとしっかり走らないと。まあ、吾輩にかなうやつはそうそういないんだがな!」

 シドの言葉に、ブルルッと馬が何やら返している。何を話しているかリーゼにはわからないけれど、彼らの間ではちゃんと会話が成立しているようだ。

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