幼女で領主で聖女様!?名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる!
 大勢が食堂に集まって、わいわい過ごすという習慣は、フリードベルク公爵家にはなかった。
 公爵が家にいれば一家四人そろって食事をしたけれど、公爵家では食卓では口を開かないものとされていたから、食卓はしんと静まり返っていたものだ。
 リーゼは、こうやって皆でわいわいやっている今の空気が好きだ。
 今日のメニューは豚肉のソテーに、菜園で採れた野菜のスープ。それに、デリモのパン屋で買ってきたパンと果物だ。領主の屋敷とはいえ、簡単に作れるメニューが多いのは、専門の料理人がいないからである。
 それから、希望者にはビールやワインなど好みの酒が出される。リーゼのグラスに入っているのは、アルダリオンの調合したハーブティーだ。

「リーゼちゃん、後で俺とデートしない?」
「デートって?」

 優雅にワイングラスを揺らしながら、オルシウスがリーゼに誘いをかけてくる。
 この屋敷にいる吸血鬼達は皆美貌の持ち主だけれど、その中でもオルシウスの美しさは群を抜いていた。

「ちょっと、星を見に行くだけさ」

 それってどういうことだろうと首をかしげていたら、――バチン、と彼が片目をつむる。

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