幼女で領主で聖女様!?名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる!
 自分の言動が、五歳児のものではないことくらい知っている。この屋敷の人達がそれを受け入れている方がおかしいのだ。
 街の人達は、リーゼのことを領主と思っているけれど、今はお飾りの領主。
 実際に日々の業務をこなしているのは、アルダリオンがメインで、あとの皆はその補助だと認識しているようだ。
 たしかに、リーゼがやっていることと言えばアルダリオンの話を聞いて「それでいいよ」と返しているだけなので、その認識も間違いではない。
 アルダリオンがリーゼの許せないことをやろうとしていたら全力で止めるけれど、今のところその必要がないだけだ。

「君、自分の価値がわかってる?」

 上半身を捻じ曲げ、オルシウスはリーゼをのぞきこんでくる。暗い夜の闇の中でも、彼の瞳がキラキラとしているのが見えた。

「オルシウスの目は綺麗……すごく、綺麗」
「今、この状況でこれを言う? だから、僕は君のことが好きなんだよ」

 包みこんだマントごと、オルシウスはリーゼを強く抱きしめる。リーゼの頬に触れる彼の頬は、少しひんやりとしていた。

「リーゼも、オルシウスのこと好きだよ?」
「それも知ってる」

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