幼女で領主で聖女様!?名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる!
 最初、人の間に紛れた時、シドは子犬の姿をとっていた。その方が、人間に警戒心を抱かれないですむからだ。
 聖女の香りを探し求め、ようやく巡り合った時には、相手が小さな子供でがっかりしたものだ。今の彼女は、シドが仕える主には値しない、と。
 ならば、側で、成長を見届けてみようか。そんな風に思ったのは、ほんの気まぐれでしかなかった。
 薄汚れた自分の身体に手を差し伸べ、食べるものを分け与えた彼女なら、シドが仕えるべき主にふさわしく成長するかもしれない。
 もし、成長しなければそれでいい。聖女としての資質を持つ人間は、いずれまた現れる。リーゼから離れて、新たな主を探しに行けばいいだけの話だ。
 けれど、リーゼはそんなシドの勝手な思いをあっさり打ち砕いた。
 小さな身体で戦いのど真ん中に身を投じ、サージの怪我を未成熟な能力で手当てし、そして、彼をかばうために立った。恐怖に目を見開き、脚は震えていたけれど、それでも逃げ出そうとはしなかった。
 たぶん、その瞬間だったのだろう。シドが、リーゼの命が尽きるまで生涯側で仕えると決めたのは。

< 262 / 310 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop