幼女で領主で聖女様!?名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる!
「この戦、俺の出番はないかもしれないなぁ。まあ、俺達が任されているのは、街中に敵兵が来た時の対応だからな。出番がないにこしたことはないんだが」

 そう言って、照れくさそうに鼻の下をこすったサージもまた、リーゼがシドを拾った時のことを思い出しているのだろう。

「お前の働きにだって、主は感謝しているさ。町の防衛計画を立てたのはお前だろ」
「当たり前だ。コルネリア様に頼まれたんだからな」

 心を完璧に読む術は持ち合わせていないけれど、サージの放つ香りがかすかに変わった。これは、過去を懐かしんでいるものだと、シドにはわかる。

「ふぅん」

 コルネリアというのは、リーゼの母親の名だそうだ。彼女の名を口にする時、サージの香りはシドを妙にむずむずさせるものに変化する。
 この香りをさせるサージは苦手だ。

「なあ、サージ。夜明けまでどのくらいだ?」

 ちらりと空を見上げ、そう問いかける。野生の勘で時間はわかっているのだが、今の空気をどうにか壊したかったのだ。

「あと三十分ってところだな」
「――では、そろそろ行くとするか」

 天を仰ぎ、シドは一声、高く吠える。
< 263 / 310 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop