幼女で領主で聖女様!?名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる!
 シドは頭を撫でてはくれないけれど、かわりに鼻先で頬にキスしてくれたり、頬を舐めてくれたりする。
 皆に甘やかされている実感はあるが、それを幸せだと思うのは悪いことではないだろう。
 防壁の上から見下ろせば、町の周囲は少しずつ変化を続けているところだった。ヴハ王国とは国境を越えないと約束をしたけれど、その約束が守られるという保証はない。
 だから、街の周囲をぐるりと一周、深い掘りで囲ってしまうことにしたのだ。その工事には、多大な労力がかかるけれど、ムラトが中心となって、街の人達が順番に手を貸してくれている。
 ドワーフが中心にいるからか、皆が自分の街を守ろうという気概に満ちているからか、工事は通常では考えられない速度で進んでいるそうだ。

「町の周囲に堀を掘って……川から水を引くんだっけ?」
「ああ。四か所出入口はあるが、そこは橋にした。いざという時には、橋を落としてしまえばいい」

 出入り口には巨大な門。この門は、夜になると閉じられてしまう。門番がいるから、どうしても夜に街に入りたい者は門番に頼んで開けてもらうことになる。

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