幼女で領主で聖女様!?名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる!
 アルダリオンと魔族を挟むようにして向かい合ったオルシウスは、世間話をしているのではないかと思うほど軽い口調で言い放った。

「国王夫妻とフリードベルク公爵夫妻がそろう機会と聞いてここに来たのだが、聖女もいるとは都合がいい」

 そう言い放った魔族は、リーゼの目には人とまったく変わるところがないように見えた。
 何の変哲もない茶の上着に白いシャツ。中肉中背、特に目立つところのない容姿だ。このまま街中ですれ違ったとしても、絶対魔族だなんて気づかないだろう。

「そろっているならちょうどいい。お前達全員死ね」

 男は、唇の片端をにぃっと持ち上げた。

(……魔力が、手に集まってる……!)

 少し前まで、まったくわからなかったのに今は違う。男の身体に流れる魔力が、右の手に集まっているのがリーゼにはわかる。
 その魔力をどう使おうとしているのかはわからないけれど、嫌な予感に見舞われた。
 男の手から炎が噴出し、その炎が国王夫妻に襲い掛かる――けれど。

「――かたくなぁれ!」

 広間中に響き渡るリーゼの声と同時に、その炎は国王夫妻の目の前で見えない壁によって阻まれた。

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