幼女で領主で聖女様!?名前を奪われ外れスキルと追放されたけど、辺境の地でなりあがる!
 リリンダの方は恋心かもしれないけれど、親子のじゃれ合いに見える二人を見て、羨ましく思ってしまったなんて認めない。リーゼはひとりで生きていくしかないのだから。

「リーゼ嬢ちゃん。どうした?」

 ひとり座り込んでいるリーゼのことが気になったらしいサージが声をかけてきたので、顔を上げた。

「どうもしない」
「なんか具合悪そうに見えたからさ」
「リーゼ、こんなに馬車に乗るの初めてだから……全部痛いの」
「ああ、そうだな……公爵家の馬車は贅沢だけど、それでもつらいよなぁ……」

 うんうんとうなずいて、サージはそれで納得した様子だった。

「おし、飯ができるぞ。たくさん食って、そして寝ろ。明日は、もうちょっと楽になるからな」

 リーゼの手を取る彼の手は、父――いや、公爵のものと同じくらい大きかった。そして、剣神と呼ばれる公爵のものと同じくらいごつごつしている。
 これが、剣を持つ、戦う人の手なのだ。

(役に立つスキルだったらよかったのにな)

 もう何度、心の中でつぶやいたことだろう。けれど、もう一度つぶやかずにはいられなかった。
 夕食は、塩漬けの肉を出汁にした干し野菜のスープと、近くの川で捕まえてきた魚を塩焼きにしたものだった。
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