志岐さんと夏目くん
恥ずかしいから私も移動しよう。
しばらくはこの辺には来られないかも……と、思った時、
「志岐さん、大丈夫っ?」
今度は、聞き慣れた男子の声が耳に届いた。
彼女たちとは逆の方向から駆けて来たのは、慌てた顔をする夏目くんだ。
「今っ、なんか騒いでたよねっ? 大丈夫っ?」
「あ、えっと、佐々木さんと平山さんに会ったんだ。 揉めてたんじゃなくて、二人に謝られたの。 この前はごめん、って」
「なんだ、そうだったんだ。 遠くから志岐さんの名前を呼ぶ女子の声が聞こえたから、なんかあったのかと思って心配したよ」
ホッとした顔を見せた夏目くんは、直後にまた心配そうな顔をした。
「あれっ、ということは近藤と山口も来てんの?」
「あーそれはわからない。 会ったのはあの二人だけだよ。 なんかね、あの日そのまま男子たちとは別れたんだって」
「そうなの?」
「うん、男子たちの発言にすっごく怒ってて、ぶん殴って別れたらしいよ」