志岐さんと夏目くん
「……えっと、夏目くんは、結局 誰と行動することにしたの?」
「ん? あぁ……見ての通り、俺一人だよ」
「え、誰も誘ってないの? ていうか誘われてないの?」
夏目くんと回りたい人って、絶対にいっぱい居ると思うんだけど……。
と思う私に、夏目くんは微笑む。
「何人かに誘われたけど、全部断ったんだ」
「どうして?」
「申し訳ないけど、一緒に回りたいって思う人たちじゃなかったからね」
「……そっか。 まぁ、気が合う合わないは、色々あるもんね」
「うん」
当たり前のことだけど、失念していた。
夏目くんと一緒に回りたい人はいっぱい居るけど、でも、夏目くんが一緒に回りたいと思う人がそこに居るとは限らない。
片方だけが楽しんだって意味がないんだ。
一緒に回るなら、お互いに楽しめる方が良い。
そんな当然のことが、私の頭からは抜け落ちていた。