志岐さんと夏目くん
「……なんか、ごめん」
「うん?」
「この前、「夏目くんと一緒に回りたい人はいっぱい居る」って言ったけど、でもそれは夏目くんの気持ちを無視した発言だったな、って思って……」
「あー、確かにあれは傷ついたねぇ。 俺の気持ちはどうでもいいのかよーって思ったもん」
「……ごめんなさい」
「ふふっ、意地悪言ってごめん。 全然 気にしてないから大丈夫だよ」
小さな子供たちで賑わう射的コーナーを見ながら、夏目くんは微笑んだ。
「というか俺も、志岐さんの気持ちを考えないで「一緒に回ろう」なんて無理言ってごめん。 志岐さんには志岐さんの考えがあるのに、俺はまた一人で突っ走って迷惑をかけるところだった。 だから、本当にごめん」
ふと、目と目が合う。
私を見る夏目くんは、とにかく優しい顔だった。
「……「一緒に回ろう」って言った日に、もっと ちゃんと言えばよかったね」
校内はどこも騒がしいのに、その瞬間だけ……夏目くんの声以外のすべての音が消えたような、そんな気がした。
「駅で一緒に笑い合った あの日みたいに、また一緒に笑い合いたいって思ってた。 ずっとずっとそう思ってたんだよ」