志岐さんと夏目くん
「……ここは小さい子たちが多いから、もう少し移動しようか」
目を合わせられないまま、コクンと頷く。
そのまま私たちは、出店のないゾーンを進んでいき……手を繋いだまま たどり着いたのは、体育館の隣にある柔剣道場の裏だった。
ずっと俯いたままだった私を気遣って、人の居ない場所を選んでくれたみたい。
「この辺りに座ろう」
「……うん」
繋いでた手が離れ、距離が開く。
それに寂しさを感じながらも、私は何も言えずに俯いたままだった。
そんな私に 夏目くんが言う。
「志岐さんってさ、実は結構 寂しがり屋だよね」
「……え?」
「だって今、離れて座ったら凄く寂しそうな顔をしたから」
「そ、そんなことないよっ」
と私が言うのとほとんど同時に、夏目くんが私の隣にピッタリと並んで座った。
肩と肩が触れ合うほど近くに……夏目くんが居る。