誰を?何を?見ているの?

☆☆本音


「私は、遥の事をずっと、
ずっ~と、想って行くし
遥の命日は、
お墓参りも欠かさずに行くよ。
薫の事も、家族の事も放置して
患者さんを優先するよ。
寂しい思いもさせるし
嫌な気分も味会わせるよ
きっと。
それでも良いの?」
と、訊ねる私に
困った顔をしながら薫は
「俺は、彩葉の気持ちが知りたいだけ
俺は期待をしても良いの?」
と、私の気持ちを確認するから

「······うん。きっと。
本当は·····
ほんとは、離婚届出さずに
いようかと思っていたんだ。
だけど、薫が困るかもと
思ったから······提出したの。」
と、本音を伝えると
「提出しなくて良かったのに。
と、言っても
俺が、全て悪いね。
ごめん。
だけど···良かった?
と·····思って·····よいの···?」
と、改めて訊ねる薫に

「うん。うん。

私は、結婚して一緒に暮らしてる時から
薫の事を好きになっていたみたい。

遥と一緒にいた時より
穏やかだったんだよね。
遥と一緒にいたのは
病院の中が、ほとんどで。
遥を心配する日々だった····から····

でも、薫が毎日、毎回、
私の作る料理を
「美味しいよ!」「ありがとう!」
と、言ってくれるのが
嬉しかったんだ。
律儀な人だなぁ、と
ずっと思っていた。

一緒に暮らして行くうち····に
もっと薫にひかれていく自分がいて

だけど······

薫には、好きな人がいて
ずっと、その人を想っているんだよ
って、自分自身に言い聞かせていたの

そんな中····

薫から香水の匂いがして····
ああ、やはり····ダメなん···だって···

でも·····離れられなくて
自分がどうしたいのか
わからなかった」
と、当時を振り返り
涙が浮かんでくる。

「ごめん。本当にごめん。

兄さんから天音の気持ちを聞いてから
天音に会いたいと言われて
会って食事をして
でも、そんなときも·····
彩葉は、一人で食べてるのかな
今日のご飯は、なんだったのかな
食べたかったな
とか、思っている自分がいて
本当に、俺はバカなんだ。

この年にもなって
自分が守りたい人も
自分のたった一人の人もわからずに。
兄貴やじいさん、沢山の人を
巻き込んで
心配や気苦労かけてしまって···

でも、もう、二度と失いたくない。

彩葉、今度は恋人から
始めて欲しい。
すぐに籍をいれて
縛りたいけど。
今は、いちからやり直しをしたい。」
と、言う薫に
「薫なら、医者の私でなくても
普通に、薫を大事にしてくれて
優先してくれる人はいるよ。
いいの?本当に、私で。」
「俺は、彩葉が良いんだ。
佐久間彩葉に、どうしようもなく
惚れているんだ。」
と、言う薫·····
「でもね····
と、言っていると
「しーっ。
ずっと、この唇にキスが
したかった。
他の人とした俺では、嫌かな?」
と、言われて、答えに困るが
嫌じゃないから、首を横にふる
と、薫は、嬉しそうに
優しいキスを唇にしてくれた。

離れては、また···
離れては、また···と、何度も繰り返し

そこに、私のピッチがなり
二人で、びっくりして
笑いあった。

ピッチは、父からで
「今日は、二人とも
もう、あがりなさい。
報告は、後日。」
と、言われた。
「「ありがとうございます。」」
と、二人で言って
一度、荷物を取りに戻り
先生方にお詫びをして
待ち合わせの場所に向かった。
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