祈りの空に 〜風の貴公子と黒白の魔法書
「うん……て、言っても、俺の知ってることは、そんなにないんだ」
 ナーザは前髪をくしゃりとつかんだ。
「今朝の母さんの占いに、こんな結果が出たんだって。『王位を失った放浪者が占いを求め、海を越えて不吉を知らせる便りが届くとき。甦った古の王はその終焉の地に赴く』」
 ユーリーに占いを頼んだ自分、船に乗っているという兄の手紙。……古の王とは、転生した雷帝、ナーザか。そして、雷帝終焉の地レイシア。
 ……兄の手紙で、レイシアで何かが起こっていることを知ったナーザがレイシアに行く、という予言か?
「あとは……俺が雷帝だったときの記憶が、何か役に立てばいいんだけど。……雷帝が復活する、って言ったよね」
 聞かれて、シルフィスは頷く。
「僕は君のことかと思っていたんだが」
「雷帝が転生する、という意味だったのなら、なぜ今、ってことになるわ」
 そう言ったのは、ユーリー。
「それなら、ナーザが生まれたときか、雷帝だった前世を思い出したときに、夢見の夢に現れるはず。──王の夢見ほどの力はないけど、占いを生業とする魔女として言わせてもらえば」
 では、夢見の見た復活する雷帝はナーザ以外の何者かということになる。
「……死んだ雷帝そのものが『黒白の書』の魔法で復活する……」
 最初にたてた推測が正しかったのか?
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