独占欲強めな御曹司は政略妻のすべてを奪いたい
アラームが鳴る前に起きなければという緊張感もなく、初めて耳にするその音で、透哉さんとふたり同時に目を覚ます。

「おはよう、琴子」

至近距離で透哉さんが柔らかく微笑んだ。

起き抜けの乱れた髪の彼が色っぽくて、私はつい恥ずかしくて目を伏せる。

「おはようございます……」

「もっと顔をよく見せて」

シーツに横たわったまま顎を掴まれ、くいっと上を向かされた。

「ん……」

どうしても彼を直視できなかったけれど、啄むようなキスが降ってくる。

まさかこんな朝を迎えるなんて想像すらしていなかった。

彼はまるで猫のように私に擦り寄る。

「琴子とずっとこうしていたいな」

「でも、もう起きないと……」

私はそわそわして、透哉さんの胸に手を当てた。

一刻も早くベッドを飛び出し、朝食を作りたい。

「まだだよ。琴子がベッドを出られるのは十分後だ」

透哉さんは楽しそうに笑い、私を寝室に残して出ていった。

私はベッドの上でぽかんとする。

十分後? 私はあと十分もここにいなければいけないの?

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