独占欲強めな御曹司は政略妻のすべてを奪いたい
フィッティングルームでひとりになると、私はウエディングドレスに袖を通した。Aラインの繊細なシルクのオーガンジーを傷つけないよう慎重に扱う。

背中のファスナーがうまく上がらずあたふたした。

あまり力を入れるのも怖いので、中途半端にドレスを着た状態で玲於奈さんが戻ってくるのを待つ。

するとカーテンの向こう側で小さな物音がして、玲於奈さんだと思った私は胸もとを押さえながらひょこっと顔を出した。

「玲於奈さん、すみません、後ろのファスナーが……」

けれどそこにいたのは透哉さんで、私は目を丸くする。

「私、こんな格好でっ……」

ドレスを胸に当てているだけで、背中は丸出しの状態だった。彼にはしたない姿を晒してしまい、羞恥に襲われる。すぐにフィッティングルームに引っ込んだら、なぜか彼も中に入ってきた。

「ファスナーが上がらないのか?」

「はい……」

どうやら透哉さんは私を手伝ってくれるつもりのようだ。ためらいながらも彼に背中を向けるとスムーズにファスナーを上げてくれ、私はほっとする。

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