生まれ変わったら愛されたい〜元引きこもりニートの理想の異世界転生〜
「・・・うわ、カビくさ!」

目覚めたハルルは思わず鼻をつまんだ。

もちろん手の上には阿形の狛犬はない。

ハルルはキョロキョロと仄暗い部屋を見渡した。

ここは波瑠の狭い六畳一間(のヲタク部屋)でも、ハルルのメルヘン乙女部屋(完全にミシェルの趣味)でもない。

「そうだ、私、あの時、八重さんのお墓で気を失って・・・」

白い光に包まれて以降は、どんなに思い出そうとしても思い出せない。

まるでモヤがかかったように意識の邪魔をする何かがあるのだ。

「よくよく考えなくても・・・これって、愛され転生ってことで間違いないのでは?」

ハルルは先程まで見ていた夢(記憶)と今世の現状を比較しながら首を傾げ呟いた。

今世、ハルルは間違いなく両親と兄妹から愛されて育った。

それはそれは迷惑なくらいに。

友人や隣人にも恵まれ何一つ不服のない18年の人生を送ってきた。

もしかしたら、平和の使徒である阿吽の狛犬と、神様の元へ行った八重さんが、波瑠をこの世界に転生させてくれたのかもしれないな、とハルルは思った。

今は見知らぬ第三者(腹黒ルグラン)に捕らわれ、こんなカビ臭い部屋にプチ軟禁状態ではあるが、少なくとも昨日までのハルルは幸せ絶好調だった。

ハルルは思わずベッドの上で正座をすると、二礼二拍手一礼をして遠い?日本の神様に心の中でお礼を述べた。

『今の状況はいただけませんが、概ね感謝致しております。幸せをありがとうございます』・・・と。
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