生まれ変わったら愛されたい〜元引きこもりニートの理想の異世界転生〜
「み、ミシェル。やめ・・・て」

言葉は抵抗を示すが、それに反して身体は思うように動かない。

“気持ちがいい・・・とてつもなく心地よいこの状態は何なのだろうか?“

ドストライクで美貌のイケメンミシェル。

兄妹でなければとっくの昔に恋に落ちていたであろうハルルの最推し。

優しくて、イケメンで、細マッチョで。

頭も良くてハルルを溺愛する態度を隠そうともしないミシェルは、全てにおいてハルルの理想だった。

しかし、そこは現実の悲しいところ。

兄妹という絶対的に越えられない一線が、ハルルの恋情を打ち砕いてきた。

容姿が全く似ていないため、自分は養子なのではないか?と疑ったことは一度や二度ではない。

たが、誰一人否定する者はいなかった。

前世の地球でも、近親婚の許されている国がある、と聞いた事はあったが、21世紀の日本を生きたハルルには、やはり近親婚は禁忌であり、"なし"の一択でしかなかったのである。

そんなハルルの複雑な思いを無視したミシェルのいきなりの暴挙。

「僕はずっとこの日を待っていた。ねえ、ハルル。抵抗はなしだよ?」

動揺してなすがままのハルルを尻目に、ミシェルの行動はエスカレートする一方であった。

ハルルをギュッと抱きしめていたというのに、腰や背中を撫で回し始めた手付きが危う過ぎる。

これは最早、兄妹の適切な距離の範疇をとうに超えている!

冷静さを取り戻し、あまりの理不尽さに怒りがこみ上げ始めたのだが、自らの意に反して、ハルルの体ら異変を感じて身動きが取れなくなっていった。

体の中に温かい何かが沸き起こっているのを感じる。

力がみなぎるというか、全身を駆け巡る感じだ。

それはキスされたことにより誘発された欲情ではない・・・。

いや、ハルルは前世でも今世でも男に欲情したことはないのでよくわからないのだが、とにかく、言いようもないパワーが内側から満たされてくるのがわかった。

「ナニコレ・・・」

内側から巻き起こる力に耐えきれず遠ざかっていく意識。

ミシェルへと倒れ込む身体。

そうして寄りかかってきたハルルの体をミシェルが優しく包んだ。

「ハルル、やっと・・の・・・だ」

白い光の中心に意識が吸い込まれていく中で、ハルルはミシェルの呟きを拾いきれずにいた。


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