生まれ変わったら愛されたい〜元引きこもりニートの理想の異世界転生〜
ストン、と大きなベッドの中央に押し倒される。

被さるようにハルルの身体に跨って、ミシェルがハルルに顔を近づける。

「ねえ、ハルル」

「な、なに?ミシェル」

「ハルルは僕のこと、本当はどう思っているの?」

「ど、どうして、今更、そ、そんなこと・・・」

「今更?おかしいな?僕は一度だってハルルの本音を聞いたことはないけど。それとも、まさか、僕以外の誰かに僕への想いを打ち明けたことが?」

ミシェルのことを実の兄だと信じて疑わなかったハルルが、一体誰にその禁断の愛を打ち明けるというのか?

ミシェルの無償の愛はハルルをドロドロに甘やかしてくれる心地よいものであると同時に、未来への不安を増強させるものでもあった。

通常の家庭に育った者になら、彼から与えられる兄妹愛は、その血の濃さ故“裏切り"とは縁遠いと感じられるものであろう。

しかし、前世で家族愛に恵まれなかった波瑠の記憶を持つハルルにとって、ミシェルの愛は諸刃の刃だった。

飽きれば背を向けられる。

期待に添えなければ視界にも入れてもらえない。

この優しいミシェルが、あの冷たかった両親と同じとは思わない。

でも、だからこそ、その彼に裏切られるのが怖いのだ。

いつか、愛する人の手を取ってハルルの元を去ってしまう。

それはずっと側にはいてもらえないということ。

前世の八重のように・・・

ある日、ハルルのもとを突然去ってしまうくらいなら、いっそ、依存しないほうがいい。

そうやって、自分の心を守ってきたハルルには、無償な愛を同じ様に求められるのは酷な話だった。

じっと唇を噛み締め、固く目を瞑るハルルの眼尻から薄っすらと涙が溢れる。

「ハルル」

もはや抑制の効かなくなったハルルから次々と溢れる涙を優しく拭ってくれるのは、幼いことからずっと寄り添ってくれたミシェルだということは分かりきっているというのに。

ガチガチにコンクリートで固めつけた頑なハルルの心は、素直からはとっくに縁遠くなっていた。

「ハルルが僕の前で泣くのは、幼少の頃以来だね。少しは感情を揺さぶることができているのかな?」

続いて優しく頭を撫でてくれるミシェル。

どんな想いでハルルが自分の感情を抑え込んできたと思うのか。

これまで抗うことのできていたハルルを誰か褒めてほしいとさえ思う。

「今更!」

「ハルル?」

「・・・兄じゃないとか!」

ハルルはゆっくりと目を見開いてミシェルを見つめると、睨みつけるように大声で

「聞いてないッつうの!」

と、叫んでいた。


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