私に恋を教えてください
柚葉の心に蘇るのは祖父の声だ。
『柚葉、部屋というのはね、その人をとても表している。部屋を見ると分かることたくさんあるんだ。大きさや置いてあるもの。こだわりや趣味とかね。仕事が出来ると思っていた人の部屋が、整頓されているかと思うとそうでもなかったり。けど、それで散らかっているから、この人はダメなんだということではない。なぜそうなのか考えてみることが大事だよ』

不動産を主な生業(なりわい)としてきた、榊原家の当主の言葉だ。

この部屋は……
きっと一人で使うためのものではなかった。

荷物があっても、もしくは子供を抱いていても、電気を自身でつける必要のない玄関と廊下。

リビングは部屋を優しく広く見せるためのオフホワイトのレザーのソファ。
食事を無機質に見せない木製のダイニングテーブル。

素敵な部屋だわ……。
そして優しい。

「柚葉、お待たせ……どうした?ダイニング、気になるか?」
「いえ。ご結婚、考えられていたんですか?」

「え……」
駆琉が軽く目を見開く。

そして、気づいたように髪をかきあげた。
「あ、部屋の広さ……か。えっと、そうではなくて。実は中古で買っているんだよ、この部屋」
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