私に恋を教えてください
「あ、もしかしてホテルですれ違いました?」
「うん」
「すみません。関係者とは存じなかったのでご挨拶もしないで」

「いや、こちらこそ柚葉の弟さんとは知らなくて。後から柚葉に聞いて」
──柚葉……。
そこで透悟は思い出す。

例えばの話し。
柚葉に向かって『付き合おう』ではなく『抱きしめたい』と言った人物。

(こいつか……)
告られたの? と聞いた透悟に柚葉は真っ赤になった。

『付き合うってことを検討してほしい、返事は今じゃなくてもいい』と言って下さったと柚葉は言っていた。

悔しいけれどあの時の柚葉が、とんでもなく綺麗だったことには間違いはない。
俯いて、はにかんだ表情さえ長いまつ毛が目元に影を作って、透明感のある肌をピンクに染めていた。

元々天使のようと思ってはいたけれど、それにさらに輪をかけて恋はこんなにも人を綺麗にするのか……と思ったものだった。

──柚葉が好ましく思っているのは、間違いのないところであろうが、果たして俺はどうかなあ?

そんなことを考えているとは、おくびにも出さず、みんながリビングに移動するのに一緒に透悟も移動した。
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