私に恋を教えてください
「着物を着てくれない?」
「は……い?」
さすがに柚葉は言葉をなくす。

「それもほら、成人式みたいな袖の長いやつあるじゃん」
「振袖……ですか?」

「そう! それ! あれいいよねえ、華やかで! 海外のお客様も喜びそう!」

本来なら無理すぎるお願いだ。
けれど……と柚葉は考える。出来なくはない、かもしれない。
柚葉ならば。

──そう言えば凛ちゃまが言っていたのですけれど、秘書業務も超えなければいけない山があると超えたくなってしまって、燃えてくると言っていましたわ……。

それを言われた時はよく分からなかったけれど、たった今そのことが分かったような気がした。

「お時間をください。何とか致します」
「さすが、柚葉ちゃん! リクエスト聞いてどうしようかと思ったけれど、マジで助かる! 本当にかかる費用があれば、請求してね」
準備あるでしょ!帰っていいから!車も使って!と侑也に部屋を出されてしまった。

柚葉は少し考えて、母のさくらに電話をかける。

『どうしたの? 柚葉ちゃんお電話なんて、珍しいわね?』
「はい。あの、海外からお客様が見えるんです。で、リクエストが振袖なんですけど」
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