私に恋を教えてください
「お疲れ様。仕事でも、こんな可愛い柚葉の着物姿を見れたんだから、俺は良かったよ」

「はいはい。ごちそうさま。お前らも早く帰れ。柚葉ちゃんは、タクシー使っていいからな」
「はい。ありがとうございます」

侑也はさっさと会社の中に入っていったけれど、駆琉はさくさくと歩けない柚葉の歩調に合わせてくれて階段では手を差し伸べてくれた。

その姿に、通りがかりの人からの視線を感じる。
ぼうっと柚葉に見惚れていたサラリーマンが、街路樹にぶつかったのを駆琉は目にした。
気持ちは分からなくもないが、前は見た方がいいと思う。

駆琉は社内に入っても柚葉の手に自分の手を添えたままでいて、エレベーターに乗っても柚葉の手を離さなかった。

「駆琉さん?」
「離したくない」
柚葉は言葉を返すことができず、きゅっとその手を握り返した。

「婚約者なんて、急に言って驚いた?」
駆琉が気遣うように、柚葉の顔を見る。
「でも本当のことです。結婚を前提にってそういうことですよね」
むしろ、そうはっきりあの場で言ってくれたことは柚葉にとっては嬉しい。

「うん。でも、ちゃんとした回答を聞いていなかったのに、勝手に言ってしまったから。勢いもあったけれど渡したくなくて。気を悪くしていない?」
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