私に恋を教えてください
けれど、あの時、『ご迷惑をかけているのに、……褒めてもらって、すごく嬉しいです』という言葉と、それまでつらい思いをしていたはずなのに涙を見せまいとしていた、本当にいたいけな姿に気持ちを揺さぶられたのだ。

本当はごめんと言って抱きしめたかった。
でもそんなことは出来なくて。

けれどこうして、侑也が柚葉と並んでいるのを見たら……

須藤は拳をぎゅっと握った。
……自分の気持ちは、はっきりした。

諦める事なんて出来ない。
手を離すことも。

あの、華奢な身体を思い切り抱きしめたいんだ。そして、甘い声で、自分の名前を呼んで欲しい。

「須藤課長、こちらにいらっしゃったんですね」
白ワインを手にした美人が須藤に向かって笑いかけていた。

綺麗に整えられた長い爪には、華やかなネイルが施されていて、身体にフィットしたワンピースを着て、肩にカーディガンを羽織っている。

いつも思うのだが、なぜ、着ないんだろう……。羽織ることに意味はあるんだろうか?

丁寧に巻かれた髪と、艶のある唇。
一般的には、かなり美人の部類に入るはずだ。
顔をよく知らないから、他部署の人なのだろう。
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