今は秘書の時間ではありません
1年経つのに一樹は私に甘いまま。
家にいるといつもくっついてくる。
片時も離れない。

会社でもずっと一緒。
もちろんベタベタなんてしないし、秘書に徹しているけれど。

こんなに一緒なのに私は全く苦痛に感じない。

一樹もそうだといいなぁ。


やっと迎えた久しぶりの連休。
一樹も珍しく休めており、2人で横浜へ向かった。

初夏だが風が吹く山下公園はとても気持ちが良く、2人でドリンクを買いベンチに座る。

2人で他愛もない話をしているが一樹は落ち着きがない。

珍しいなぁと思っていると急に立ち上がった。

「紗奈。ここ横浜で俺たち始まったよな。あれから1年。あの時の言葉覚えてる?」

「あの時の言葉?」

「そう。俺の一生を紗奈にあげるって。俺が紗奈を支えたい、紗奈のそばにいさせて欲しいって。」

「…」

「もう一度言わせて。紗奈に俺の一生を捧げます。俺が紗奈を世界一幸せにします。紗奈のそばにいさせてください。結婚してください。」

そう言い終わると一樹は王子様のように膝をつき私に指輪を出してきた。

「は、はい…よろしくお願いします。」

涙ながらに答えると一樹は私の薬指に指輪をはめてくれた。

1年越しのプロポーズに私は一樹に抱きついた。
1年前と同じように一樹の心臓の音はとても速かった。
でもこの速さが、一樹の緊張を感じさせてくれてとても嬉しい。

「一樹、幸せにして!」

「もちろん。」

「一緒に幸せになろ。」

「そうだな。」

「仕事もひと段落したし、いーっぱい甘えていいぞ。甘やかしたいんだ。」

「今より?今も一樹は甘いよ。」

「こんなもんじゃない。秘書じゃない紗奈は可愛すぎて持て余してしまうくらいなんだ。どうしたらいいか分からないくらい。でもなかなか紗奈は甘えてくれないだろ。秘書じゃない時は俺がうんと紗奈を甘やかしたいんだ。」

「秘書の私は怖い?」

「まさか。でも、出来る女すぎて怖い。仕事が早すぎて俺が追いかけてるよ。俺をサポートしてくれて助けられてるよ。いつもありがとな。」

「私の方がいつも一樹の背中を追いかけてるよ。一樹に置いていかれないように、いらないって言われないように。」

「絶対いらないなんてないからな!」

「うふ、もう分かってる。あの時みたいには思わない。一樹がこれでもかってほど教えてくれたよ。ありがとう。」

私から一樹にチュッとかするようなキスをした。

一樹はびっくりした顔をしていたがニヤリと笑い深く口をつけてきた。

「ちょっと…外だよ!」

「煽る紗奈が悪いー!」

「さて、かわいい紗奈を連れてそろそろ帰ろうかな。俺たちの家に。」

「うん。私たちの家にね!これからよろしくお願いします。」

「もちろんだ。今日の夜も任せておけ!」

「バカ。」

真っ赤になる私に、
「今はプライベートだ!秘書の時間じゃないぞ。さぁ、あまやかしてあげないと…。」



分かってます。
今は三浦一樹だけの友永紗奈です。

秘書の時間ではありません…。


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