今は秘書の時間ではありません
「何買ってきたの?」

「夕飯の準備です。」

「何にするの?」

「シーフードマリネとキーマカレーです。」

「うわぁ、俺好きなやつだわ。」

「そうですか。じゃ…」

なかなか帰らない社長に苛立ちを隠せない。
もう辞めるんだからいいや、と邪険に社長を扱う。
もう知らない、とばかりにまた私はエレベーターへと歩き出した。
すると社長はついてくる。

はぁ??
意味わかんない。

「なんなんですか?話は月曜日にいたします。おかえりください。」

「俺、シーフードマリネもキーマカレーも好きだからさ。」

「はぁ、そうですか。」

「食べ行ってもいい?」

私は敬語も忘れ、即答した。
「ダメに決まってるでしょ!!!」

膨れる社長を横目に私は帰ろうとするがまだ付いてくる。

「パワハラですか?ストーカーですか?社の倫理委員会に訴えますよ。」

「どっちも違うよ!」

「みんなそういいます。」

「俺は君と話がしたい、それにキーマカレーは好物だ!それだけだよ。」

いい加減マンションのエントランスで話しており周りからの注目があつまってきた。

困ったなぁ…

どうしたものか悩んでいるとグルルルルル…と地響きのような音が聞こえてきた。

まさか、と思うと社長が赤くなり笑ってた。

「昨日の夜から食べてなくてさ…恥ずかしいな。」
そう言いながら頭をかいていた。

社長のお腹の音?!
なんだかその顔を見たら面白くなってきた。
雷のような地響きをさせるお腹の後に今更ながら笑えてきた。

「ウフフ…ごめんなさい。笑って。お腹がそんなに空いてるなんて。」

「キーマカレーだと聞いたから余計に空いたんだ…」
と恥ずかしそうに答える。
その顔は35歳とは思えないほどに幼く見える。
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