今は秘書の時間ではありません
社長は私の手を押さえドアを閉めさせてくれない。

お互い沈黙のまま…

私が社長の手を払おうとしたらかえって手を握られてしまう。

なんか握られてる…

その手をまた離そうとするがしっかり握られており離れない。

「何を考えてるんですか?離してください!」

「ごめん、離せない。」 

「…」

「俺は君が必要だから。」

「…」

「俺は秘書としてではなく君にそばにいて欲しいと思ってる。」

「なんですか?それ。公私混同ですか。やっぱり秘書としていらないんじゃないですか。」

「いや…」

なんかマズイぞ。
たしかに秘書でいて欲しいんだか個人的に好意を持ってもいる。
けどこんな言い方じゃ伝わってないんじゃ…
俺はどちらの君も好きだと言いたいのに。
秘書としての君に惚れ、普段の姿に惹かれてる…そう言いたいんだ。
上手く頭が回らず口籠ってしまう。

「失礼します!」
怒ったような口調で勢いよく手を離されドアを閉められた。

私は悔しくて涙が出てきた。

秘書として認められ、残って欲しいと言われているわけでなく女として残って欲しいってことなのね。

私の仕事は所詮そこまでだった。
仕事を認めてもらってるわけではなかった。

嗚咽が漏れる…
私はそのまま玄関で座り込んでしまった。
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