今は秘書の時間ではありません
すっかり涙顔の紗奈を連れて屋上のテラスへ行く。

涙は乾いたが目元が腫れていて、また泣かせてしまったことを反省。
どうしてあんな遊びで抱いてたんだろう。
あの頃の俺に言ってやりたい。
あとで後悔するぞ、と。

冷たいタオルをもらい紗奈の目元を冷やしてあげる。

どのくらいしただろう。
紗奈が俺に寄りかかってきた。
タオルをどかし覗いてみたら疲れ果てたのか寝ていた。

昨日からいろんなことがあり過ぎたのだろう。

最後にまた泣いて心身共に疲れたのだろう。

紗奈を抱き上げ、木陰に移動してから俺のジャケットを膝にかけた。俺にもたれかけさせるように寝かせた。顔が見えないよう目元は冷やしたままで…。

木陰は心地よい風も吹いていて、隣で紗奈は眠っていて…なんだか幸せだなぁ。

30分くらいしたところで紗奈が動き出した。

「目が開いた??」

「あ!!!ごめんなさい。」

慌てて寄りかかっていた身体を起こし反対側へ反らせた。

反動でベンチから落ちそうになり、慌てて手を伸ばす。

「おっと…危ないよ。」

「ごめんなさい。」

「ここは気持ちいいね。何か飲み物買ってくるから待ってて。」


一樹はトレーにレモネードをのせて戻ってきた。

甘酸っぱくて身体に染み渡る。

泣いたり、すねたり、寝ちゃったり…私は恥ずかしくて顔も上げられない。

「さーな。復活した??」

「うん…」

「髪の毛、俺に寄りかかって崩れちゃったから直しておいで。これ使ってるところ見せて!」

きっと化粧を直せるように声をかけてくれたのだろう。
せっかく私も自分で買いたいと思うくらい気に入ったコーム。使わせてもらおう。

私は立ち上がり化粧室は向かった。 
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