どうにもこうにも~出会い編~
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 自分の腕の中で小さな寝息を立てて眠る彼女が愛おしい。

本当は、今すぐにでも抱きたい、というのが本音だ。いや、たしかに今彼女を抱いてはいるのだが、もっと深い意味で、だ。

しかしあまり事を早く進めるのは俺の美学に反する。玉ねぎの皮を一枚一枚ゆっくり剝がしていくように、相手の知らない部分を少しずつ露わにしていきたいのだ。玉ねぎなど、うまい例えだとは自分でも思わないが、そういう志向なのだ。

それにしても今日は、会っていなかった期間が長かった割に、飛車のごとく一気に進んでしまった。冷静になった頭に、にわかに後悔と不安の念が襲ってくる。好意を抱いている女性から自分もまた思われているという多幸感と、若い彼女の未来を奪ってしまったという後ろめたさが胸の奥で交錯している。もう一度突き放すべきだったのだろうか…。

もう遅いか。今は彼女との時間を大切にしたい。考えるのはもうやめにしよう。俺は静かに目を閉じ、彼女の存在を確かめるように抱き直して間もなく深い眠りに落ちた。

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